『GREEN GATE』Scenario
『GREEN GATE』
驚く程広い庭の奥に立つ、白壁のこぢんまりとした
一軒家のシェアハウス『GREEN GATE』
家主の薔薇の趣味で
季節の花々や、多種多様なハーブが
丁寧に育てられている。
1階に、 住人達が自然と集まる広いリビングに
開放感のあるアイランドキッチン、バスルーム。
2階に、住人それぞれの個室。
扉の向こうには、 誰にも見せない時間と
それぞれの事情が眠っている。
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【Scene 1 - 薔薇・泰人・幸・エル】
薔薇:皆さん、今、お時間大丈夫ですか?
泰人:なぁに? 僕、仕事で疲れてるんだけど……
幸:また撫で回してきたんでしょ、動物達……毛塗れだよ、泰人… …ウケるんだけど。
エル:コロコロ要ります? 泰人さん。
薔薇:……はぁ、大事な話なので、聞いて頂けると助かります。 新しい入居者さんがね、決まったんですよ。
泰人:可愛い彼らが悪いのさ……て、随分早くない? ……あ、コロコロ欲しい。
幸:四葉兄、海を渡って、2週間か……確かに早いね。
エル:はい、泰人さん、どうぞ……どんな方ですの?
薔薇:道友 裕さん。 専門学生らしいですよ。 18歳、だったかな。
泰人:また若い子だね……いつ入居予定?
幸:部屋は片付けてったから、いつでも大丈夫だけど……エル、 歳近いじゃん。
エル:ワタクシの1つ下かしら? 仲良くして下さると、嬉しいのですけれど……男の子?かしら。
薔薇:来週の日曜日ですよ。 四葉君の部屋は元々綺麗に使ってくれてましたし、 掃除も済んでますから、問題は無いんですが……
薔薇:入居申請の書類は全て届いているんですが、 性別の記載が無くてですね。 どちらでも通用する名前ですし。電話の声だと、判別つかなくて… …流石に聞きにくいですし。
泰人:3日後? 随分急だね……まあ、薔薇さんが困らないなら、 どっちでも良いでしょ。 変な奴じゃなけりゃ。
幸:……アンタには言われたく無いと思うけどなぁ、泰人。
泰人:どう言う意味さ、幸。
エル:まあまあ、お二人とも……薔薇さん、お写真、 ありませんの?
薔薇:ありますよ……お顔だけは共有しとかないと、と思って、 リビングにお越し頂いたんです……はい。
泰人:少年? ……いや、わからないな。てか、これで18歳?
幸:女の子じゃね? ……でも、確かに幼いね。 中学生みたい。
エル:まあ、可愛らしい……うふふ、是非、 お茶会に招待しなくては……食器はあれにして、茶葉は……
泰人:ほら、幸、前言撤回してよ……僕より変わり者、 ここに居るじゃん。
幸:似たり寄ったりよ、アンタ達……はぁ。 エル! お茶会は、裕が良いって言ってからね!
エル:そうだわ! 知り合いのパティシエにケーキを作らせましょう! 苺を沢山乗せて……
泰人:あーあ……またどっか別の世界、行っちゃったね。
幸:聞いちゃいねぇ……おーい、エル!
薔薇:歓迎してあげて下さい、ね?
泰人:こっちは、いつものスルースキル発動か。 ……やれやれ。
薔薇:皆様、お疲れの所、申し訳ありませんでした。 ゆっくり休んで下さいね。 裕さんの事、宜しくお願い致します。
エル:そうですわ! ハート型とか、女の子はお好きですわよね!
幸:エールー!ほら、薔薇さん、行っちゃったよ! 妄想の世界から帰ってきな! 女の子って決まってないから!
泰人:ほっときな、幸……当分帰ってこないよ。さて、 僕も寝るよ……おやすみ。
エル:うふふ……!
幸:あ、ちょっと……! ……アンタも、さっさと部屋戻りなよ、エル……疲れた……
【Scene2 - 裕・幸・エル・泰人・薔薇】
裕:……何、この……『童話から飛び出してきました』 感全開の空間……え、『GREEN GATE』てここだよね!?
裕:メルヘンだ……まじか……私、ここに住む訳!? ……てか、どんなお嬢様とか執事が住んでるんだ……!?
幸:あははは、ウケる! でっかい独り言!
裕:うぇっ!?
幸:あ、ごめんごめん……アンタ、裕でしょ? 道友 裕。薔薇さんから話は聞いてるよ。
裕:ギャル! ……え、城田さんから? え? メルヘンの入居者さん!? ……て、いきなり呼び捨て……
幸:『GREEN GATE』ね……アタシ、幸。で、お察しの通り、ここの住人。
裕:情報量過多!
幸:裕、アンタ面白い子ね……と、やば! 遅れちゃう! 帰ったらまた話そ……じゃーね!
裕:厚底ブーツで疾走してった……強い……はっ! いかんいかん、ええと……入って良いのかな……
エル:あら? 誰か居らっしゃるの?
裕:……でたぁ!? メルヘンお嬢様ー!?
エル:あら、そのお顔……まあ、まあ! もしかして、裕さん!? あら嫌だわ、今日、日曜日! 薔薇さんを呼びに行かなくては!
裕:あああ、家の中ですよね!? どうぞ、ゆっくりお茶飲んでて、プリンセス! 一人で行けますから!
エル:ワタクシは、エルですわ、裕さん。 プリンセスと言う名前ではありませんのよ。
裕:……そりゃ、そうでしょうよ、うん。ええと、エルさん…… 城田さん、中にいらっしゃいます、よね?
エル:ええ、先程お買い物から戻られましたから。 ……お荷物、1つお持ちしますわ?
裕:あ、それ、教科書詰め込んだヤツだから、重たい……!
エル:よいしょ……さ、行きましょう?
裕:軽々……? み、見た目に寄らず、強い。
エル:さあ、ここが玄関でしてよ……薔薇さーん、裕さん、 いらっしゃいましてよー?
泰人:薔薇さん、今2階に荷物運んでいったよ……やあ、裕。 ようこそ『GREEN GATE』へ……自己紹介、と行きたい所なんだけど、 急遽店に行かなきゃいけなくなっちゃって。 また夜にゆっくりね。
裕:白い壁に緑の扉……や、やっぱりメルヘンな世界だ……あ、 は、はい! 行ってらっしゃい!
エル:今の方は泰人さんと仰るの。 ペットショップの店長さんなのですよ。
裕:あんなに若いのに店長!? ……や、やっぱり、強い……
薔薇:はいはい……ああ、無事に着いたんですね、良かった。 エルさんが案内してくれたんですね、ありがとうございます。 私が家主の城田です。 ようこそ、裕さん。
エル:今、泰人さんにもすれ違いましたわ。
裕:あ、初めまして……道友 裕です。さっき、幸さん? にも会いました、あの……ピンクの髪の。
薔薇:おや、そうでしたか。 なら、一応住人全員と顔は合わせたのですね……送られた荷物は、 貴方の部屋に運んでおきましたよ、裕さん。
裕:あ……すみません、ありがとうございます。
薔薇:後は私が案内しますよ、ありがとう、エルさん。 お茶会の途中でしょう? 改めての自己紹介は夜に全員集まった時にしましょう…… お疲れでしょうしね。
エル:あ、そうですわね。 まずは旅の疲れをゆっくり取って下さいまし。……それでは、 失礼致しますわ……落ち着いたら、 ゆっくりお茶会致しましょうね?
裕:お茶会……?
薔薇:エルさんは紅茶とスイーツが大好きでしてね。 貴方を是非持て成すんだ、と……張り切っていましたから。
裕:……成程。だから、漫画に出てきそうな、 瀟洒なテーブルセット……
薔薇:せがまれましてね……庭の雰囲気を壊さなければ構わない、 と言ったら、ああなりました。……さて。 先にお部屋に案内致しますね。
裕:庭のお手入れは、城田さんが?
薔薇:薔薇、で結構ですよ、裕さん。 ……ええ、植物を育てるのは趣味でして。 ハーブなんかも植えて居ますから、好きに使ってくださいね。
裕:私なんか、ミント枯らしたのに……この人も、強い……
薔薇:はい?
裕:い、いえ! 何でも!
薔薇:では、どうぞ……階段、気をつけて下さいね。
【Scene3 - 裕】
裕:ん……あれ、いつの間にか、寝てた……? そりゃ、こんなふかふかベッドの誘惑には勝てないよなぁ…… ふぁ。
裕:しかし……広いし、綺麗な部屋だなぁ……こんな部屋、 一人で使ってあの値段? 破格すぎるでしょ……
裕:丁度、募集見つけてほんとラッキーだったなぁ。 都会って何処も家賃高いし……いや、これはこれで良いのか? て気になるけど……ん?
裕:なんか、良い匂い、する……薔薇さんかな……あ、 いかんいかん、我慢……! 初日だぞ、裕…… ……ちょ、ちょっとだけ……階段から覗くだけ……
【Scene4 - 裕・薔薇・泰人・エル・幸】
薔薇:はい、召し上がれ?
裕:……すみません。穴掘って埋まります。 ……て、泰人さん! いつまで笑ってんですか!
泰人:だ、だっ、て……ッ! 帰って来て、靴脱いで顔、上げたら、階段横の壁から、生首…… ッ!
エル:まあ……多少吃驚はしましたけれど、も……ッ!
裕:うう……エルさんまで……
薔薇:秋刀魚の焼ける匂いは、凶器みたいなものですからね。
泰人: ……そりゃ、涎たらしても仕方ない、か。
裕:垂らしてません!……多分
薔薇:ご飯、お変わりは?
裕:要ります……大盛りで。
幸:ただいま~……わ、何、良い匂い……あー! 裕ずるい! 薔薇さん、アタシの秋刀魚は!?
薔薇:はいはい、先に手を洗って来てください。
エル:七輪、でしたっけ? あの、秋刀魚を焼いてらしたの。
裕:匂いの発生源は庭だったのか……てか七輪……そりゃ、 美味いわ……身、ふっくら。皮、ぱりぱり……はぁ。
泰人:幸せそうに食べるねぇ。 つられちゃうね、僕もご飯お変わり貰おう。
幸:良し! いっただっきまーす! ……て、早くね!? 裕、飯、食うの!
裕:お米が美味しいのは、素晴らしい事です。
エル:大盛りのご飯がもう半分……
薔薇:エルさんを呆れさせるのは中々ですね。 まあ、沢山ありますから。 それに、美味しそうに食べて下さるのは、作る方からすると、 嬉しい限りですね。
裕:幸せぇ……
幸:……泰人が珍しくお変わりしてるのびっくりしたけど…… 納得だわ、裕見たら。
泰人:とは言え、もう食べれないけどね。 はぁ、お腹いっぱい!
エル:ワタクシも良く食べましたわ! ……日本食は元々美味しいですけれど。 今日は一段と……でしたわ。
薔薇:お食事が済みましたら、改めて自己紹介タイム、 と行きましょうか。 エルさん、お腹がこなれたら、紅茶いれて頂けますか?
エル:ええ、喜んで……なんの茶葉にしようかしら。
泰人:あんまり癖の無い奴でお願いするよ……本当に食べすぎた!
幸:同じく……
裕:はぁ、お腹いっぱい! ご馳走様でした!
薔薇:裕さんがいっぱい食べて下さいますから。 腕の振るい甲斐がありますね……さて、では、のんびりと、 お茶を頂きましょうか。
エル:すぐに準備しますわ。 少しだけ、お待ちになってね。
【Scene5 - 裕・薔薇・泰人・エル・幸】
薔薇:さ、裕さん、座って下さい。
裕:あ、ありがとうございます……わ、良い匂い。
エル:皆様、満腹でしょうし。 今回はあっさりとしたニルギリを選びましたわ。
泰人:たまにトンデモナイもの飲まされるからね……
幸:アタシもハーブティーは物に寄るな……あ、美味し。 口直しにピッタリね。
薔薇:では、改めて……私から行きましょうかね。 城田薔薇です。 一応、この『GREEN GATE』の家主ですね。この家は祖父からの賜り物でして。 空にしておくのは勿体無いし、家も痛みますから…… と言う理由で、シェアハウスとして使って貰おうかな、と、ね。
薔薇:そんな感じで、ありがたくも満室として頂いて。 ありがたい限りですね……私自身は既に天涯孤独な身ですが、 海外に、兄と慕う親友がおりまして。一年に一度は彼に会いに、 2週間程留守にしますが、その時は、 泰人君に管理を任せて居ますので、ご安心を。
裕:毎年会いに行ってらっしゃるんですか?
幸:そうそう。その間は、皆で家事持ち回りする感じ。普段は、 薔薇さんが全部やってくれるからさ。
裕:皆のお母さんだ……
薔薇:……せ、せめてお父さんにして下さいません? ……さて……こんなものですかね。では、次の方、どうぞ?
泰人:順番的に僕だね。 保地 泰人。親が経営するペットショップ『Triple Crown』の店長してる。以上。
エル:短すぎません? 泰人さん。
泰人:そんなに話す事無いよ……ああ、薔薇さんが居ない間は、 掃除洗濯担当。 ……エルと幸に任せると、壊すからね、雑だから。
裕:仲間だ……
泰人:何、裕もそっち側?
裕:ははは……はは……
幸:じゃ、次……アタシね。 津川 幸。駅前の『THE HORSE』ってビルの中の、 アパレルショップの店員やってるよ。 今、裕がいる部屋は前まで、アタシの兄の四葉が住んでたんだ。
幸:で、アタシは三人兄妹の真ん中。妹は花って言うの。 地方の大学で、獣医になる為に頑張ってる。
裕:『THE HORSE』て、あの巨大ビル?でっかい馬の看板かかってる……
幸:そうそう! 裕も良かったら買いに来てよ。 可愛くしたげるからさ! で、薔薇さんが留守の間は料理担当。ま、 薔薇さん程レパートリーは無いけどさ。
泰人:こんな見た目に反して、美味いよ、幸の料理は。
裕:料理の心配いらないのは、でかい……!
エル:では、最後はワタクシですわね。 池家エルと申します。イギリス人とのハーフですわ。 お父様と、薔薇さんの親友の方に親交がありまして。 そのツテで入居させて頂きましたの。
エル:今は、大学で植物学を学んでいますの。 趣味は乗馬と紅茶とお茶会。またご招待致しますから、 一緒に楽しみましょう? 裕さん
裕:乗馬!? ……あ、お茶会は是非!
幸:嫌いなもんは嫌いって言いなよ? たまに凄いの出てくるから。
エル:ハーブティーは複雑なお味が特徴ですの! ……で。ワタクシはお庭のお手入れ担当ですわ。
薔薇:では、最後に裕さん、お願いしますね。
裕:あ、はい……えと、道友 裕です。 趣味は……食べる事と寝る事です。 で、医療系の専門学校の1年生です。
泰人:そう言えば……今、秋なのに、 また何でここに引っ越して来たの? 時期的には中途半端だよね。
裕:安いとこ優先で探したら遠いとこしか無くて。 で、たまたま、学校に近いここが募集してたんで。
幸:まあ、ここ、駅まで近いしね。
エル:治安も宜しいですしね。
裕:そんで、飛びついちゃいました。……で、 私は何を担当したら良いですかね。
泰人:食べる係?
裕:え。
幸:実際、回ってるからねぇ、3人で……まあ、 皆のサポート的な?
エル:何か、お得意な事はありまして?
裕:……すみません、多分掃除したら壊すし、 アイロンは皺だらけにします……料理、できません、花、 枯らすのは得意です。
薔薇:……四葉君枠ですね。
裕:へ?
泰人:掃除も洗濯も、不器用だったからね、四葉。
幸:野菜切らしたら、半分は零すしね。
エル:水やり加減、分からないと仰ってましたしね……
裕:え、ええと……?
薔薇:皆さんのお手伝いしてあげて下さい。
裕:……なんか、すみません。
幸:良いよ良いよ、四葉兄もそんなんだったし。
泰人:そうそう。皆のマスコットみたいな?
エル:……泰人さんが言うと洒落になりませんわ。
薔薇:さて、では……顔合わせはこれくらいにして。後片付けは、 私がしておきますから。解散といたしましょう。
泰人:そうだね、会議の資料纏めなきゃだし。
幸:アタシも寝ようかな。朝ミーティングで早いんだよね。
エル:ワタクシも試験のお勉強致しますわ……薔薇さん、 お言葉に甘えて。
薔薇:さ、どうぞ、裕さんも。
裕:あ、はい……私は明日は休みなんで。食器、 運ぶくらいは手伝います。
薔薇:おや、ありがとうございます。
裕:皆さん……個性的ですねぇ。
薔薇:ふふ……そうですね。 でも、良い方ばかりですよ。
裕:それは何となくわかりました。
薔薇:なら良かった……ああ、そこに置いといて下さい。 後はやりますから。 ……今日は疲れたでしょう。裕さんも、もう休んで下さい。
裕:あ、はい……おやすみなさい。
【Scene6 - 裕】
裕:はぁ、ベッドがサイコー! ……しかし。
裕:優しそうな人達で良かった。 ……癖は強いけど。
裕:明日から、楽しく……なる、と……良い、な……
裕:(寝息)
【Scene7 - 裕・薔薇・泰人・エル・幸】
裕:……? バターの、良い匂い……お母さん……? あ、違う……私シェアハウスに来たんだった……て事は! 薔薇さんだ……!
泰人:階段、駆け下りて転ばないでよ、裕。おはよ。 また匂いにつられたね?
幸:今日休みなんでしょ? ゆっくり寝てれば……て、無理ね、ウケる。 ……裕、涎たらしそうな顔してる。
エル:幸さん、笑っちゃダメですわ。 可愛らしいではありませんか……おはようございます、裕さん。
裕:おはようございます、フレンチトースト!
薔薇:斬新な挨拶ですね、おはようございます。 直ぐに焼き上がりますから、座って待っててください。
裕:はい!
泰人:良いお返事で……ご馳走様でした。 先に行くね。
幸:アタシも出るわ、いつもありがとう、薔薇さん。
エル:ワタクシも登校致しますわ。それではごゆっくり、裕さん。
【Scene8 - 裕・薔薇】
裕:ありゃ、皆行っちゃった……て事は、 フレンチトースト独り占め……ふふふ
薔薇:はい、どうぞ、召し上がれ。
裕:わぁあぁあ、美味しそう……! 頂きます! ……うん! バターがじゅわぁ……しっとり染み込んでる……!
薔薇:2枚では足りそうにないですね……残りも焼きましょうか。
裕:(頬張りながら)おねがいひまふ!
薔薇:はいはい……しかし、本当に良く食べて下さいますね。
裕:食べるの大好きなんで。 好き嫌いも殆どありません!
薔薇:それは素晴らしい。
裕:お母さんには『アンタが居ると食費がたまらん』 とは言われましたけど……
薔薇:ふふ……食べ盛りですから。仕方ありませんよ。
裕:あ、そうだ、薔薇さん……この辺、 ドラッグストアありませんか?
薔薇:ん? 駅の反対側に1件ありますよ。 お買い物ですか?
裕:アルバイト探してまして。 どうせなら、ドラッグストアが良いな、と。
薔薇:ああ、丁度募集出てましたよ……確かチラシが……あ、 はい。これですね。
裕:ドラッグ、えいち、えー……なんて読むんですか、これ?
薔薇:ハーツ、ですね。地域密着型の小さなチェーン店ですよ。
裕:ほう! 良いですね、大手より、雰囲気良さそう。
薔薇:私も良く利用しますが、店員さんも優しいですし。 良いんじゃ無いでしょうか。
裕:後で見に行ってみます! あ……薔薇さん、それと……
薔薇:はい、お変わり、焼けましたよ。
裕:い、いや、そうじゃなくて……食べますけど。
薔薇:蜂蜜、足します?
裕:是非! ……あ、あのですね! 今度海外へ行かれるご予定をお聞きしたくて。
薔薇:ああ……今年は、1度行きましたので…… 早くて年明けですかね。
裕:そうですか……なら、それまでにお手伝い、 少しでも覚えます。
薔薇:ご無理なさらなくても大丈夫ですよ。 あの3人がしっかりしてますから。
裕:……まあ、足手まといになる気しかしませんけど。
薔薇:ふふ……大丈夫ですよ。お気持ちだけで。 四葉君も、似た様なものでしたし。
裕:四葉さん、て幸さんのお兄さんですよね? どんな方だったんですか?
薔薇:それは、多分、嫌でも幸さんが語って下さいますよ。 ご兄妹大好きですから。
裕:仲良さそうでしたもんね……薔薇さんが会いに行かれるのは、 親友さん、ですよね。海外まで毎年会いに行く、て…… それも仲良しですよね。
薔薇:そうですね、昔から兄と慕っている方です。 昔から可愛がって貰っていましてね。
裕:あ、窓際の写真って……
薔薇:ああ……そうです。私と、親友の、谷野 仁(やの じん)と、仁兄さんの愛馬の『カミカゼ』です。
裕:う、馬飼ってらっしゃるんですか!?
薔薇:海外は敷地が広いですから、 環境的には問題無いそうですよ。
裕:スケールが違う……色々違う……!
薔薇:カミカゼの事は娘の様に可愛がっていましてね。 私も行ったら、乗せてもらいますが……良い馬ですよ。
裕:まさかの女の子! ……め、めちゃくちゃイケメンなのに、このお馬さん……!
薔薇:馬は、私よりエルさんの方が詳しいですけどね…… それ繋がりでお預かりしたお嬢さんですし。
裕:エルさん、乗馬趣味、て言ってましたもんね……流石お嬢様… …
薔薇:動物、お好きです?
裕:あ、はい、実家にアメリカンショートヘアのでぶ猫が居ます。 ……また、私みたいに良く食べるんですよ……えっと、これです。 見てください、このお腹。
薔薇:ま……まんまるですね、可愛らしい……! お名前、伺っても?
裕:ヤマタイコクです。略してヤマ君。
薔薇:これは……泰人君に見せたら喜びますねぇ。
裕:え、太らせすぎ、て怒られませんか。
薔薇:手足も大きいですし。 健康なら問題ないんじゃ無いですかね?
裕:まあ……確かに。 あ、ご馳走様でした。
薔薇:おや、ぺろりと行かれましたね……お粗末様でした。
裕:色々話のネタありがとうございました。 仲良くなれそうです。
薔薇:皆、語り出すと止まりませんから……お覚悟を、ふふ。
裕:じゃあ、ドラッグストア行ってきます! ありがとうございます、薔薇さん!
薔薇:はい、行ってらっしゃい。気をつけてくださいね。
【Scene9 - 裕・泰人】
裕:ほほぅ……小さなチェーン、て聞いてたけど、中々広いなぁ… …丁度セール中か。 あ、だから、チラシか……えーと、安っ!? お菓子、安っ! カゴ、カゴ!
裕:これと、あれと……あ、ジュースも……
泰人:あんなけ食べて、まだお菓子も食べるの?
裕:うわぁ! ……び、びっくりした、泰人さん……
泰人:良く太らないね……て、言うか、細すぎる位なのに。 幸とエルが羨ましがってたよ。
裕:陸上やってたんで、高校まで。
泰人:ああ、なら納得。 ……でも、辞めたら増えるでしょ。
裕:現役時代程じゃないですけど、運動はしてますから。 今も走って来ましたし。ま、体質もありますけど……
泰人:なるほどね。良く食べて良く動くなら、そりゃ健康的だ。
裕:泰人さん、休憩中ですか?
泰人:いや、本来なら定休日なんだ、うちの店。 会議があったからね。 動物達はちゃんと、スタッフ達が毎日見てるから、 僕は今日は上がり。 ……で、お菓子買いに来たの?
裕:あ、いや。バイト募集してるて聞いたんで見に来ました。
泰人:そうか、医療系の学生だっけ。
裕:そうです。 なんで、働くならドラッグストアが良いなぁ、と。
泰人:登録販売者目指してるの?
裕:いや、どっちかと言うと医療事務系です。 登録販売者は高校の時に取りました。
泰人:へぇ、なら、採用されるんじゃない?
裕:なら良いんですけど。 資格持ってるだけで実務経験無いですからね……あ、あった、 募集の張り紙。
泰人:……時給、安いねぇ。
裕:で、でも! やりたい仕事なんで! ……一応、仕送りもありますし……
泰人:それが一番じゃないかな。 スタッフさん、呼び止める?
裕:後で改めて電話しますよ……皆さん忙しそうですし。 担当者の方のお名前だけ控えとこ……あ、そうだ、泰人さん、 これ見てください。
泰人:ん、なに……ッ み、見事にでかい猫だね、アメリカンショートヘア? だよね!?
裕:うちのヤマタイコクです。
泰人:名前? それ……
裕:はい。 ……よく食べるんですよ。
泰人:健康状態は? 医者からダイエット指導とか……
裕:いえ、何も。 年1回の予防接種以外、病院行った事ないです。 ……やっぱ太り過ぎですか?
泰人:手、デカイなあ……写真じゃわからないけど、 体も大きいよね? 何キロ位?
裕:お迎えした時に、5キロは超えます、て言われたんですが…… 今、7キロ近いです。
泰人:動く?
裕:狭い家の中、走り回ってますね。
泰人:なら、問題無いんじゃない? 個性の範囲でしょ。 ……てか、猫飼ってたんだ。
裕:良かった……はい。朝、薔薇さんと色々話してて。 泰人さんに見せたら喜ぶと言われたので。
泰人:いやぁ、可愛いなぁ……僕もね。 引っ越したら飼いたいんだけど。
裕:え!?
泰人:今の所、その予定は無いよ。 ……ああ、僕の恋人が、日本中飛び回る仕事でね。 なかなか、一緒に住めないからね。 ……相当、覚悟決めないとさ。
裕:恋人いるんですか!
泰人:一応ね。 ……ま、帰って来るはずの人が、帰って来ない日が続くのには、 まだ耐えれそうにないからさ。
裕:泰人さん、寂しがり屋さん……?
泰人:僕、1人にされると死んじゃうから。
裕:は、はぁ……
泰人:だからって、仕事辞めろ、なんて言う気も無いしね。 今の環境は気に入ってるし。 まあ、毎晩電話もするし、メールも頻繁にしてるし。 本当なら2人の家に閉じ込めておきたいけど。
裕:……重っ。
泰人:ん?
裕:いえ、何でも……そ、それで! 飼うなら、やっぱり猫ですか!?
泰人:迷うよね。 みんなそれぞれの良さがあるから。でも、 やっぱり従順な大型犬かな。庭付きの家に住めるなら、だけど。
裕:従順……
泰人:自由奔放な猫ちゃんも捨てがたいけどね。
裕:……泰人さんが言うと、なんか、怖い……
泰人:さっきから何ブツブツ言ってるの?
裕:いえ! うちも、何をお迎えするか揉めたなー、て! 思い出しまして!
泰人:そう言う話してる時って楽しいんだよね……あ、と。 電話だ。仕事終わったかな。 ……じゃ、僕も買い物して帰るよ、後でね、裕……もしもし?
裕:はーい……いやぁ、重い。重いなぁ……カゴの重さより重い… …忘れてたよ。 お会計、しよ……
【Scene10 - 裕・幸】
裕:はい、はい……それでは、当日、よろしくお願いします。 はい、失礼します……はぁ、電話って緊張するなぁ。
幸:裕ー! 居るー!?
裕:わ、幸さん!? リビングかな……声でかっ。 はーい!
幸:あ、居た居た……降りといでよ、 お客さんに焼き芋貰ったんだ!
裕:焼き芋! 食べます! はい!
幸:お、素早い……はい、なんだっけな、紅はるか? だったかな。
裕:紅はるか! ねっとり甘い奴!
幸:そうなの?
裕:うわ、いっぱい! 食べて良いんですか!
幸:……他の3人の分は残しとくのよ。
裕:勿論! 頂きまーす! はむ……甘ぁあい!
幸:あはは、でかい1口ね、ウケる……アタシも……ん、 美味しい!
裕:しかし凄い量ですね。
幸:シェアハウスの皆さんでどうぞ、て貰ったのよ。…… それより、バイトどうだった?
裕:薔薇さんから聞いたんですか? さっき電話して、面接の日にち決まりました。
幸:お、やったじゃん! 採用されると良いね。 HEARTSはアタシも良く行くけど、雰囲気良い店だよ。
裕:今日、泰人さんに会いましたよ。 ……てか、泰人さん、恋人居たんですね。
幸:顔面偏差値は高いからねぇ、泰人……性格はかぁなり、 重いけど。
裕:はは、は……ノーコメントで。
幸:恋人さんの話知ってて、その反応、て事は惚気けられたね。 ……ま、2人が幸せなら良いんじゃない。
裕:幸さんは、彼氏は……て聞いて良い奴ですか。
幸:今の所、仕事が恋人ねぇ。 アタシも、四葉兄と花にべったりな自覚はあるしさ。 そっちのが大事かな。
裕:四葉さん、て、私が来る前の入居者さんですよね。
幸:そ。 エルとはまた違った意味の天然でね。 一人で海外なんて、本当は行かせたくなかったんだけど……あ、 仁さんの話は聞いた?
裕:はい。薔薇さんの親友さんですよね。
幸:そうそう。留学先、そこだからさ。……ま、 心配は心配だけど、仁さん居るから、まだ安心かな。
裕:あれ? じゃあ……お馬さん関係の仕事に?
幸:んー、まあ、ざっくり言うとそうかな。 引退馬支援、て解る?
裕:引退……競走馬? ですか?
幸:そうそう。 レースからも繁殖とかからも引退した馬達の、 余生に関わる仕事をしててね。その一環で。 海外の事情が知りたいって。
裕:確か花さん? 妹さんも獣医さんでしたっけ?
幸:まだ学生だよ。 2人共、アタシと違って賢いからさ。
裕:幸さんも、一生懸命、 好きな仕事で頑張ってるじゃないですか。 皆さん、素敵ですよ。
幸:……ありがと。まあね。世の中のギャルを、 皆可愛くしたいからね。
裕:素晴らしいですよ。 兄妹皆で、誰かを幸せにする仕事、選んでるじゃないですか。
幸:アンタ、良い子ねぇ、裕……ほら、もう1個食べな……あ、 メール! ちょっとゴメン!
裕:はーい。いただきまーす。
幸:ホームシックで食欲無い!? ただでさえ少食なんだから、ちゃんと食べなさいよ! あ、花からも……きゃー!?
裕:ど、どうしたんですか!?
幸:来週、こっち来るって! やだ、薔薇さんにアタシの部屋泊めて良いか聞かなきゃ! ちょっと行ってくるわ! 薔薇さーん!
裕:心配性、て言うか……ブラコンシスコン……可愛いなぁ、 幸さん。
裕:……もう1個だけ、食べて良いかな。
【Scene11 - 裕・エル】
裕:あー、疲れた。 もうすぐ家着く……ん? あれ、庭に居るのエルさんだ。
エル:あら、裕さんおかえりなさい…… 良ければお座りになりません? 今、丁度アフタヌーンティーにしようと思ってましたの。
裕:うわぁ、ネットでしか見た事ない、スイーツのタワー! 是非是非! ……えっと、一番下のサンドイッチから順番に頂く、 て奴ですよね?
エル:本来はそうですね。サンドイッチ、スコーン、スイーツ、 と下から上へ、なんですけれど……お気になさらず。 好きに食べてくださって良いんですのよ?
裕:いえいえ、折角なんで……てか、 エルさん1人分じゃないんですか?
エル:うふふ、そろそろ、お帰りになると思って、 用意して待ってましたの。ナイスタイミングでしたわ。
裕:なんと! ……なら、遠慮無く頂きます!
エル:はい、召し上がれ……紅茶はアールグレイですわ。 お飲みになれまして?
裕:あ、はい、好きですよ。 ……ん、美味し。
エル:ワタクシはロイヤルミルクティーに致しますわ、裕さんは?
裕:私はストレートで……サンドイッチうまっ。 ……はぁ、疲れた脳に沁みる……
エル:ふふ、本当にいつも、幸せそうなお顔です事。
裕:ん……このスコーン……人参?ですか?
エル:ええ、キャロットスコーン、薔薇さんが焼いてらしたので、 分けて頂きましたの。
裕:へぇ、甘くないのも美味しい……あ、人参で思い出しました。 エルさん、乗馬が趣味だって仰ってましたよね。
エル:ふふ、発想が裕さんらしいですわね。 そうです、日本に来てからも、クラブに通ってましてよ。
裕:確か、仁さんとお父様が知り合いなんでしたっけ?
エル:あら、良くご存知……そうですわ、 カミカゼにも良く乗せて頂きました。いつかは、 ワタクシだけのお馬さんをお迎えしたいとは思っているんですけど 、日本では厳しいですから。
裕:帰国されたら、て事です?
エル:ワタクシ、思いの外、日本が気に入ってしまいましたの。 だから……まだ迷っているのですわ。 帰国して、父の牧場で飼育するか、日本でクラブ馬に乗るか……
裕:エルさんなら、行き来できそうなのに。
エル:あら……そう、そうですわね! 思いつきませんでしたわ! そうですわね、こちらには『GREEN GATE』と言う、帰る場所がありましたわ! ……あ、でも……
裕:でも? なんですか?
エル:数ヶ月も留守にするなら、薔薇さんに申し訳ないですわね… …他の入居者さんを入れた方が……
裕:それはその時、相談してみたら良いんじゃないですか? ……駄目でも、遊びに来れば良いじゃ無いですか。 ……エルさんのお家だった場所、に違いは無いんですから。
エル:……ふふ。そうね、そうですわね。ありがとう、裕さん。
裕:? なんかお礼言われる様な事、言いました?
エル:本当に……四葉さんの次に来られたのが、 貴方で良かったですわ。改めて、ようこそ……いらっしゃいませ、 裕さん。
裕:このケーキうまぁ!? 生クリーム上品! 苺、甘酸っぱ! サイコー! ……あー、幸せぇ……
エル:……うふふ! そうですわね、こうじゃなくては。
裕:は!? すみません! 聞いてませんでした! あまりにも衝撃的な美味しさで!
エル:大丈夫ですわ……さ、紅茶、お変わり如何?
【Scene12 - 裕・薔薇・泰人・エル・幸】
薔薇:ふふ……騒ぐだけ騒いで、食べながら寝るとは……
泰人:バイト、受かったの余っ程嬉しかったんだねぇ。
幸:本当、子供みたいでウケる……あーあ、 スプーン握ったまんま……
エル:18時までにお電話なければ、でしたっけ? ……1分遅れで着信くるまで、緊張されてたんでしょうね。
薔薇:とりあえず、ソファにねかしましょうか……よいしょ。
泰人:本当に、面白い子が来たね……楽しくて良いけど。
幸:薔薇さん、毛布持ってきたよ……よ、と。もう肌寒いからね。
エル:良かったですわね、裕さん……寝顔、本当に子供みたい。 ふふっ。
裕:うーん……まだ、たべます、むにゃ……
薔薇:……寝てますよね?
泰人:本当に食いしん坊だなぁ……
幸:裕らしいじゃん。
エル:……あら、綺麗に完食してらしてよ?
泰人:お変わり欲しかったんでしょ。子供はカレー好きだし。
幸:ま、薔薇さんのスパイスカレー美味しいからね。 辛、うま、辛! ……て、うるさかったけど。
エル:賑やかで宜しいじゃありませんか。 食後のティータイムに、起こして差し上げましょう。
薔薇:そうですね……裕さんのお陰で、 毎日楽しく過ごさせて頂いていますよ……また、 後でお話聞かせて下さいね。 一旦、おやすみなさい、裕さん。